
当院のレーザーによるタトゥー治療の大きな方向性は以下の4点です。
その代償として以下の2点が犠牲になります。
(1)については、照射エネルギーは複数照射で(multi-pulse)エネルギーを蓄積することは出来ない、という重要な原則があります。
つまり一撃で(single-pulse)必要十分なエネルギーを加えないとエネルギーが届かないという事です。言い換えれば「1回の治療時には重ね照射が出来ない」ということです。なぜなら複数照射でエネルギーを与えようとしても初回照射直後に皮膚内で照射によ-る気体の層(gas & steam)が形成されてしまい(white light flash)、2回目以降の照射が色素に到達できなくなるからです(optical shielding phenomenon)。ですから単位面積当たりの照射エネルギー(J/cm2)を一定値以上でsingle-pulse照射できない限りタトゥーは何年照射し続けても消去できません。
(2)についてはいくつかの原則があります。
皮膚表面の照射エネルギー(J/cm2)が小さければ小さいほど皮膚ダメージは小さくなります。また同じトップハットのビームプロファイルであっても照射口-径が大きければ大きいほどビームプロファイルが安定し、ガウシアン化や照射部分周囲へのエネルギーの影響が減少します。インク深度でのフルエンスを同一に設定した場合、照射口径が小さければ小さいほど皮膚表面のフルエンスは増大し、その結果皮膚ダメージが増大します。つまり照射口径を大きくすればするほど皮膚に優しく、小さくなればなるほど皮膚表面が損傷するため、可能な限り大きな照射径で照射した方が(2)に対しては有利に働きます。
(3)について。
いくら色素が除去できてもそこの皮膚性状が周囲組織と異なっているとその輪郭が残ってしまい不自然な印象が残ることがあります。その場合、主に「色」をターゲットにしたQスイッチヤグレーザーのみでは不十分です。相当激しい照射方法にはなりますが、高出力の炭酸ガスフラクショナルレーザーでスタックを重ねて、広い面積を細かな多くのドット上のビーム光のスポットでスポット状に表皮・真皮を打ち抜いて貫通蒸散させてしまうことでタトゥーとその周囲組織をぼかすようにすることが可能です。
ここで(1)(2)を両立させるにあたって立ちはだかる大きな壁があります。それはQスイッチヤグレーザー自体のマシン容量です。レーザーを1ショット照射する際にどれだけのエネルギー(J)を出せるか(J/Pulse)がタトゥーレーザーとしての生命線といっても過言ではありません。弱い出力しか出せないマシンは有効照射エネルギー(J/cm2)を確保するためには照射径を小さくせざるを得ず、皮膚ダメージが増大します。細いビーム光で照射すれば何とかインク深度まで到達は出来るのだが、到達するまでに組織を破壊しながらレーザー光が進んでいくというイメージです。その結果、色素は抜けても色素沈着・色素脱失・肥厚性瘢痕・ケロイド化を誘発することになります。高出力で照射できるマシンは大口径で有効照射エネルギー(J/cm2)を確保することが出来るため皮膚ダメージが段違いに少なくなります。太いレーザー光が皮膚表面を素通りしてインク深度まで到達し、そこでインク領域を蒸散させるイメージです。その結果、相対的に皮膚ダメージは減少します。
つまり、(1)(2)を両立させるためには、必要十分なエネルギー(Enough energy at Ink region)を精度の高いトップハット型ビーム(TopHat beam)によって大口径(large spotsize)で単一照射(single-pulse)にて照射することが皮膚表面のダメージを最小限にして深部に十分なエネルギーを到達させる唯一の方法です。引き続き、どうしても残存してしまう一部の領域は小口径照射にて皮膚ダメージを覚悟で照射していくことになります。
色素の除去がある程度進んだ段階で(3)を加えていきます。治療範囲全体を照射するのではなくポイント所を中心に(意味の強い絵柄の箇所やコントラストの強そうな箇所;e.g. 龍の顔、細かな絵柄、文字 など)に照射し、ぼかしを加えていきます。
補足ですが、Qスイッチヤグレーザー以外のQスイッチレーザー(例えばQルビー)でも小範囲単色ならば時間をかければ(レーザーの性質上最大1Hzのスピードで小口径照射しかできない)照射は可能ですが、照射範囲が広い場合は実際問題としてかなり厳しく、カラータトゥーの場合は不可能です。サロンのマシンは絶対的マシン容量が不足しているため多少色を薄くする程度以上のことはできませんのでサロンゆかりの方にはたいへん申し訳ないのですが時間の無駄です。そもそもレーザータトゥー除去は医療行為です。


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